実はこのテーマについては昨年に書こうと思っていたのだが、先日Youtubeを見たら今年になってまさにこのテーマで2つの「東京カチート」がアップされているではないか。 ということで、後先(あとさき)は別にしてこのことを取り上げたizukyualpharesort21に大拍手を送ります。
「2つの」というのは、元モノラル・シングル版とステレオ版で、大きな違いはステレオとなっただけでなく、バックコーラスが当初のモノ版は男性コーラス、ステレオ版は女性コーラスという大きな相違があるのだ。
フランク永井の名唱「東京カチート」はデビューして5年目の1960年、のりに乗っていた時期のシングル盤である。佐伯孝夫作詞、吉田正作曲、寺岡真三編曲という超強力ユニットによる作品だ。VS-405でB面は「アーケード・ブルース」。
いかにこの時期はすごかったかというと、安保闘争吹き荒れる1960年のこの年にはシングルの吹き込みだけで38曲、LPやオムニバス盤を5枚も発売しているのだ。
この当時から歌謡曲のステレオへの移行がはじまり、2年後にフランク永井の初のステレオ盤「1962:SLB-13-フランク永井ステレオ魅惑の低音傑作集」が発売された。収録されている6曲はすべて新たにステレオで吹き込みなおされたものだ。女性コーラスのステレオ版はここで初めて登場したもの。
ではこの後にリリースされた「東京カチート」はすべてこのステレオ盤が使われたのか、というと決してそうではない。この後1964年から「フランク永井ステレオ・ハイライト」シリーズがでた。ここでは当然ステレオ盤が使われているのだが、その後は多くは当初のモノラル版が使われている。
ビクターは当時はステレオ版を中心に発売していくものと考えていたと思えるのだが、ファンの求めるのはモノラル版だったため、煮え切らないままモノラル版を最後まで使っている。この傾向は最大のヒット「有楽町で逢いましょう」も同じである。ただ「有楽町で逢いましょう」の場合は表に出るケースが多すぎるために、後年のステレオ時代に他と比較して見劣りしないようにいい音質のステレオ盤も楽しめる。
フランク永井作品については、CDに収めるときは「*印はモノラル」というコメントをつけて、オリジナルを優先する方式が多い。
さて「カチート」とは何かとよくテーマになる。私がたまにお寄りする東京神保町のショットバー「洒落頭」では、話題になったらその場ですぐに調べて話された。ここには知識と経験豊富な物知りが集まっているのはもちろん、辞書や地図が数多く常備されているのだ。
佐伯孝夫が使用した「カチート」の意味は「相棒、仲間、ごく親しい相手」ぐらいのニュアンスである。スペイン語のネイティブが使うことばとは少し違うかもしれない。当時ラテン音楽で日本でも歌われていたので、まったく初出しではなかったが歌謡曲というジャンルではたいへんフレッシュな耳に残る言葉であった。
実際に聴き比べてみてください。
izukyualpharesort21さんのアップされたのは、下記の2つ。